虐待を防ぎ、安心の暮らしを 成年後見制度で実現する権利擁護 - 陽だまり福祉法務事務所
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虐待を防ぎ、安心の暮らしを 成年後見制度で実現する権利擁護

高齢者・障害者虐待の状況

厚生労働省の令和5年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等 に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査によると、高齢者虐待の虐待判断件数は18,223万件で、令和元年度の相談件数と比べると約3.7%増となっており、同じく厚生労働省の「令和5年度都道府県・市区町村における障害者虐待事例への対応状況等(調査結果)」によると、障害者虐待の虐待判断件数は3,477件で、令和元年度と比べると約58%増で、高齢者・障害者ともに増加傾向にあることがわかります。こうした現状を踏まえ、本人の権利擁護のため、成年後見制度の活用による虐待防止が求められています。

虐待の割合

 高齢者障害者
養護者施設従事者養護者施設従事者
虐待の類型身体的虐待65.3%51.3%67.5%51.9%
心理的虐待39.0%24.3%32.0%48.0%
ネグレクト19.0%22.3%11.2%6.9%
経済的虐待14.9%18.2%16.5%8.1%
性的虐待0.4%2.7%2.3%11.0%

養護者:高齢者・障害者の世話をしている家族、親族、同居人等

施設従事者:老人・障害者福祉施設またはサービスを提供している事業所で業務に従事している人

参考:厚生労働省「令和5年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果」

参考:厚生労働省「令和5年度都道府県・市区町村における障害者虐待事例への対応状況等(調査結果)」

虐待が発生する要因

高齢者虐待と障害者虐待の発生件数が増加している背景には、高齢化社会の進展や障害者を取り巻く環境の変化が大きく影響しています。

高齢者虐待においては、高齢化に伴い、要介護状態の高齢者が増加し、介護の負担が家族に集中しやすくなっていることが挙げられます。核家族化や地域社会の希薄化も相まって、介護者が孤立し、精神的なストレスを抱え込みやすい状況も、虐待の発生リスクを高めていると考えられます。

また、虐待を受けている人の状態として「認知症の症状」であった人が56.4%であったことから、認知症が虐待に繋がっている可能性があります。認知症によって、高齢者は意思疎通が困難になったり、周囲の状況を理解することが難しくなったりすることがあります。その結果、介護者とのコミュニケーションがうまくいかず、誤解や葛藤が生じ、虐待に発展してしまうケースも少なくありません。

障害者虐待においては、障害者に対する社会の理解不足や偏見が、虐待の発生を助長している可能性のほかに、障害者を取り巻く環境の変化も、虐待の増加に影響していると考えられます。障害者総合支援法の施行により、障害のある人が地域で生活する機会が増えましたが、一方で、地域社会における障害者への支援体制が十分に整備されていないという現状もあります。障害者に対する適切な支援やサービスが不足すると、障害者とその家族が孤立し、虐待のリスクが高まる可能性があります。

認知症、知的障害、精神障害などにより判断能力が低下している人は、虐待を受けていても、それ自体を虐待として認識できない、または自分自身の被害について的確に訴えることができないことで、発見が遅れ、被害が拡大する恐れがあります。

成年後見人の役割

成年後見制度は以前のコラムでも述べたように、精神上の障害により、物事の判断や意思表示ができない人の権利を守るための制度です。成年後見人は契約行為の代理だけでなく、定期的な訪問を通じて微細な変化にも気づき、行政、福祉団体と連携を図りながら本人の生命、財産の保護について期待されます。

虐待を発見したら速やかに市町村(地域包括支援センター)に通報するだけでなく、施設入所を進め、本人と虐待者の接触を制限したり、財産管理権に基づき養護者から通帳等引き渡してもらい、本人の生活向上のため適切に使用するなど、虐待を防止する役割を担うこととなります。また、高齢者虐待防止法及び障害者虐待防止法は、虐待者(養護者)の支援も規定されています。成年後見人の本来業務ではありませんが、虐待者の問題を解消することで家族関係が修復され、本人の生活向上に繋がるのであれば、成年後見人も関係機関と連携していくことも必要になってくるのではないかと思います。

今回は少々怖い話になりましたが、外部からの犯罪に巻き込まれる以外に、身近な人から権利侵害を受ける可能性があることをご理解いただけたかと思います。大切な人を守るために成年後見制度の利用について検討してみてはいかがでしょうか。

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