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高齢者や障害者の暮らしを守る成年後見制度とは

認知症高齢者や障害者は、身体的な弱さや、判断能力が不十分なため、悪質な訪問販売や詐欺などの被害に遭いやすくなります。弱い立場の人々の権利利益を保護し、本人が安心して生活できる手助けをするのが成年後見制度です。

成年後見制度について

成年後見制度を所管している法務省では、制度を以下のように説明しています。

認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々は、不動産や預貯金などの財産を管理したり、身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議をしたりする必要があっても、自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。また、自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい、悪徳商法の被害にあうおそれもあります。このような判断能力の不十分な方々を保護し、支援するのが成年後見制度です。

参考:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji95.html

成年後見制度は大きく、「法定後見」と「任意後見」2つに分けられます。

法定後見制度

認知症、知的障害、精神障害などにより物事を正確に理解できなくなった人は、ご自身の財産管理や契約を結ぶ際に、適切な判断(端的に言うと自分にとって得か損か)が難しくなります。このように判断能力に疑いのある人の家族などが、家庭裁判所に申し立てることにより、利用できる制度です。判断能力の有無が基準となりますので、判断能力の低下が認められない場合には利用できません。
なお、家庭裁判所への申し立ては誰でもできると言うわけではなく、以下のように限定されています。

申立権者本人、配偶者、4親等内の親族、成年後見人等、任意後見人、任意後見受任者、成年後見監督人等、市区町村長、検察官

必要書類を添えて申し立てをしたあと、家庭裁判所の調査などを経て、成年後見人が選任されます。なお、法廷後見制度には、本人の判断能力の程度に応じて、「後見」「保佐」「補助」の3つの類型があります。
日常の買い物が一人で行えないほど物事の判断ができない人が「後見」、決まった日常生活を送ることはできるが、不動産売買などの重要な契約は難しいと判断された人は「保佐」、ほぼ、一人で日常生活を送ることができるが、不動産売買などの重要な契約をするには不安があると判断された人は「補助」に分類されます。
この分類により支援する側の権限の範囲が決まります。

類型権限権限の内容
後見人代理権・取消権代理権 
財産に関する全ての法律行為を本人に代わってすることができる
取消権
日常生活に関する行為以外は取り消すことができる
保佐人同意権・取消権同意権
民法13条1項に規定されている行為は、保佐人の同意が必要。
取消権
保佐人の同意がない行為(民法13条1項)は取り消すことができる
補助人一部の同意権・取消権一部の同意権・取消権
民法13条1項の中から家庭裁判所が決定する。

任意後見制度

任意後見制度とは、まだ本人が元気で判断ができるうちに、自分の判断能力が低下してきた時に備えて、あらかじめ自分が信頼する人(任意後見人)に財産管理や生活支援をお願いする制度です。支援をしてもらえる人を誰にするか自分の意思で選び、その人に何をどこまで支援してもらうか、自分で決めておくことができます。
任意後見制度は公証役場で公正証書による契約書を作成する必要があります。
判断能力の低下が見られたら、家庭裁判所に申し立てるのは法定後見と同じですが、任意後見人が契約内容に従った仕事をしているかを監視する「任意後見監督人」が選任されるという違いがあります。
法人後見制度よりも自由度があり、自分の意思を反映させやすいですが、一方で任意後見契約に記載のないことは出来ないこと、また、取消権がないため、万が一被後見人が不利となる契約を結んでも、任意後見人には取り消しができないという弱点があるので注意が必要です。

成年後見制度のメリット

①法的保護

判断能力が低下した方の財産や権利が法的に保護されます。万が一不利な契約をしても取り消すことができますので、悪徳商法や詐欺から守ることができます。

②生活支援

医療や介護、福祉サービスの利用手続き、不動産や預貯金などの財産管理のサポートを受けることで、自分らしい生活を送ることができます。

③安心感

家庭裁判所が成年後見人を選任し、後見人の活動を監督するため、支援内容の透明性と信頼性が確保されますので、本人やご家族の将来への安心感につながります。

成年後見制度のデメリット

①職業の制限

判断能力が低下していると判断される制度のため、会社の役員や弁護士、医師といった責任ある立場に就くことができなくなります。

②後見人変更の制限

本人やその家族が後見人との相性が悪いと思っても、一度選任されると、原則、死亡や解任といった特別な事情がなければ交代させることはできません。

③コストがかかる

法定後見人制度を利用する場合、申し立てを行なってから実際に利用が開始できるまで、4ヵ月ほどかかると言われています。また、必要な書類の準備を考慮に入れると、それ以上の期間になると予想されます。

金銭面においては、後見人に弁護士、司法書士などの専門職が選任された場合、報酬が発生します。任意後見制度ですと、任意後見監督人の報酬も加わることになります。

まとめ

これまで述べてきましたが、成年後見人制度は判断力が低下し、悪徳商法や詐欺による権利侵害、経済破綻してしまう恐れのある方を守り、地域でその人らしく安心して生活するための制度です。
現時点では判断能力に問題がなくとも、身近に親族など頼れる人がいない場合は、任意後見人制度を活用して、将来の財産管理を、信頼できる第3者などに行なってもらうようにして、経済破綻のリスクを回避することに取り組むのもよいでしょう。
制度上デメリットはありますが、メリットも考慮に入れて、ご家族の安全・安心な生活を守るために、成年後見制度の利用についてご検討をしてみてはいかがでしょうか。

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