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高齢者の一人暮らしのリスクと対策

高齢化社会の現状

日本は急速な高齢化社会を迎え、少子高齢化の影響が社会全体に広がっています。厚生労働省の「令和6年度高齢社会白書」によれば、現在、日本の高齢化率は約30%とされており、これは世界最高水準です。2070年頃には日本の総人口の40%近くが高齢者となると推計されています。

また、高齢夫婦のみの世帯と高齢独居世帯の合計は、全世帯の中で約60%を占めており、少子高齢化の進行に伴い、これらの割合は今後も増加が予想されます。特に、高齢独居世帯は、犯罪や健康に関するリスクを負いやすくなります。

出典:内閣府「令和6年版高齢社会白書」

一人暮らしのリスク

1.健康面のリスク

基本的に加齢に伴い、筋力や身体機能が低下していくものですが、一人暮らしになると、周囲との係わりが希薄となることで活動量が減り、身体機能の低下が進みやすくなります。身体機能の低下は転倒するリスクが高まり、屋外だけでなく屋内でもケガをする可能性が増します。

また、身体機能の低下が進行すると、日常生活動作(ADL)に支障をきたし、脳機能にも悪影響を及ぼすことで、認知症の発症リスクも高まり、火災、事故、犯罪に巻き込まれる可能性が増します。

2.社会的孤立

家族が身近にいない高齢者は、話し相手がいないことで孤立しやすく、地域や社会とのつながりが希薄になりがちです。

交流が少なくなると、楽しみが減り生きがいを感じることがなくなることで、生活意欲の低下を招くことになります。

ここから、日常生活において身の回りに気に掛けることもなくなり、生活の質(QOL)の低下につながり、精神面、健康面に悪影響を及ぼすことになります。

3.安全面のリスク

一人暮らしの高齢者の多くは日中に在宅しているので、悪質な訪問販売に狙われやすい傾向にあります。孤独を感じやすい環境から交流を求め、不用意に相手を信用しがちになります。

このため、不要な商品の購入や、必要のない修繕工事の契約をさせられるなどの被害を受けやすくなります。

主な悪質商法

点検商法住宅・屋根などを点検し、「損傷している」など事実と異なる報告をして、不必要な工事契約を結び、法外な値段を請求する。
かたり商法「市役所の方から家屋点検にきました」「消防署の方から消火器の点検にきました」など、官公署と誤認するような紛らわしい言い方をして、リフォーム契約を結ばせたり、消火器やガス警報器などを売り付ける。
押し買い商法買取り業者が自宅を訪問し、貴金属等を相場よりも安い金額で強引に買取り商品を持ち帰る商法。

孤立している高齢者は外部からもたらされる情報に乏しく、最新の詐欺の手口、防犯対策の知識が不足していることが多いです。また、判断能力の低下から犯罪を見抜くことが難しくなり、詐欺などの被害に遭いやすくなります。さらに、判断力や注意力が低下することで、空き巣など犯罪者の侵入を許してしまう状況が生じやすくなります。

主な特殊詐欺

オレオレ詐欺親族や警官を装って、親族が事件・事故を起こしたとして、慰謝料や示談金を騙しとる。
架空請求詐欺ありもしない契約に基づいた料金を請求して、金銭を騙しとる。
還付金詐欺行政機関の職員を装い、税金や医療費などの還付を受け取れると言い、ATMを操作させて指定の口座に現金を振り込ませる。

効果的な対策

1.介護保険サービスを利用する

介護保険サービスは、高齢者が安心して日常生活を送るために必要なサポートを受ける制度で、原則費用の1割(所得に応じて2割~3割)を自己負担することで利用できます。

介護保険サービスは、自宅での家事援助などを行う訪問介護や、施設に通いレクリエーション等を通じて機能訓練を行う通所介護、自宅で介護を受けながらの生活が難しい方が特別養護老人ホームなどに入所するための施設サービスなど、多様な支援メニューがあります。自宅で料理や掃除のサポートを受けることで、生活の質の向上が見込めますし、訪問リハビリテーションを利用することで、身体機能の維持・改善を図り、転倒や骨折のリスク低減が期待できます。また、一人で自宅にいることが退屈だという場合には、デイサービスを利用することでほかの利用者との交流の機会を得ることができます。

これ以外の効果として、デイサービスや訪問介護などを通じて、社会とのつながりを保つことができ、孤立感や不安感を軽減する効果があり、精神的な安定を図ることができます。

介護保険サービスの利用や高齢のご家族の相談については、お住いの市町村にある「地域包括支援センター」を利用することが良いでしょう。介護、医療、福祉の専門家がご本人やご家族の不安に寄り添い、最適なサービスにつなげます。

2.社会的サポートの強化

地域のコミュニティとのつながりを持つというところでは、老人クラブへの参加が考えられます。老人クラブは原則60歳以上であれば誰でも加入できる団体で、レクリエーションなどを通じて、高齢者相互の健康増進や介護予防に取り組み、生きがいのある生活を営める地域づくりに努めています。会員になることで、定期的に開催されている老人クラブのイベントに参加することができ、地域にお住いの同年代の高齢者とも関係が築かれるので、孤立を防ぐことにもつながります。

また、老人クラブ以外では、地域で活動している民生児童委員も頼りになる存在です。

民生児童委員は、人格識見が高く、社会福祉の増進に熱意のある人で、都道府県知事の推薦を受け、厚生労働大臣から委嘱された地域のボランティアです。民生児童委員は地域住民の一員として、地域の人々の生活上の相談に応じ、行政をはじめとして、各種制度やサービスにつなげる役割を担っています。主に高齢者や障害をお持ちの方の訪問活動を行っていますので、ご家族の見守りを希望する場合には行政の福祉担当窓口に相談してみるとよいでしょう。

3.安全対策

報道などで広く知られている一般住宅を狙った「侵入犯罪」は、闇バイトにおける犯罪の一形態として急増しています。その手口は、周囲に気付かれないようひっそりと行うものではなく、住人の在宅の有無にかかわらず複数人で窓などを破壊して住宅に押し入る、宅配業者や点検業者を装うなどの方法で住宅に押し入り、現金や貴金属を奪い取るなどといった、巧妙かつ凶悪な手口のものが増えています。

侵入犯罪はいつ起きるかわかりませんので、常に防犯意識を持ち対策をしておく必要があります。ここで個人が行える防犯対策についていくつかご紹介したいと思います。

①在宅時でも、出入り口や無人の部屋の窓に鍵をかける。

②訪問者に対し、不用意にドアを開けず、ドアスコープやインターホン越しで確認する。

③脚立やポリバケツは侵入の足場にされてしまう可能性があるので片づける。

④郵便受けなどに新聞や郵便物が溜まっていると、長期不在を悟られてしまうので、新聞配達を休む、親しい人に郵便物を預かってもらうよう手配する。

⑤玄関をツーロック式、窓には補助錠を取り付ける、窓ガラスに防犯フィルムを貼るなど、侵入に時間を要する環境を整える。

⑥自宅に必要以上の現金を置かない。

⑦相手がどれだけ信用できる肩書を名乗っても、家族構成や資産状況について答えないこと。

このほか、地域の交番に勤務する警察官も身近で頼りになる存在です。警察官と信頼関係を築くことで相談しやすくなり、犯罪やトラブルの早期発見・解決が促進されます。さらに、警察官が定期的に自宅に訪問する関係性になっていれば、犯行に及ぶことが容易でなくなり、犯罪予防につながります。

参照:警察庁の防犯サイト『住まいる防犯110番』

高齢者が安心して一人暮らしを続けるためには、これらのリスクを認識し、適切な対策を講じることが重要です。地域の方々やご家族からも声掛けをして、頼れる人が身近にいることに気づいてもらい、相談しやすい環境を整えていくことも必要です。

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